【動画生成AIツール比較】11サービスを同一プロンプトで試す

「どの動画生成AIが、どんな映像表現を得意としているのか?」
「テキストや画像から、本当にCMのような映像は作れるのか?」

動画生成AIの進化は、私たちのクリエイティブ制作の常識を覆しつつあります。しかし、その一方で、各ツールの実力や作風の違いは、実際に使ってみなければ分からないのが実情です。

この記事は、AIを使った動画制作を専門とする私たちブルーアールが主要な動画生成AIの「作風」と「プロンプトへの反応」を、同一条件で徹底的に比較する、クリエイターやマーケターのための実践的な実験レポートです。各ツールの個性と実力を深く理解し、貴社の映像制作を一段階上へと引き上げるための一助となれば幸いです。

なお、各ツールの料金や商用利用の規約に関する詳しい比較は、以下のまとめ記事で詳しく解説しています。
【2025年最新】動画生成AIのおすすめ7選|料金・商用利用を制作会社が徹底比較

もし、この記事を読み進める中で「AIを自社の宣伝・広告課題の解決に活用したい」「社内向けにAI活用の勉強会を開催したい」と感じられたなら、私たちがお力になれるかもしれません。まずはお気軽に、記事の末尾かお問い合わせからご相談ください。

比較の前に:動画生成AIの基本的な仕組み

私たちの「実験」の結果をより深く理解いただくために、まず画像生成AIがどのような仕組みでビジュアルを生み出しているのか、その基本を簡単にご紹介します。現在主流となっているのは、「拡散モデル」と「Transformer型モデル」という2つの技術、そしてそれらを組み合わせたアプローチです。

動画生成AIの基本構造

現在の動画生成AIは「拡散モデルをベースに、時間と空間の繋がりを学習させたプログラム」です。一枚の絵を高画質に描く技術に、動きの滑らかさを加える工夫がされています。

なぜ動画が作れるのか?

なぜなら、動画とは「連続した静止画(フレーム)」の集まりだからです。AIはまず、画像生成AIと同じ「拡散モデル(Diffusion Model)」の技術を使って、一枚一枚のフレームを高画質に描く能力を持っています。その上で、「時空間Transformer(時間と空間を理解するAI技術)」といった技術を組み合わせることで、前のフレームと次のフレームで、被写体がどのように動くべきか、背景はどのように変化すべきかという、時間と空間を超えた一貫性を学習しているのです。

具体的な動作例

例えば、「歩く猫」の動画を作る場合、AIは「猫の絵」を描くだけでなく、「歩くという動作」によって手足や尻尾がどのように連続して動くべきかを、学習した膨大な動画データから予測して描画します。これは、私たちがパラパラ漫画を描くときに、前のページの絵を参考にしながら、少しずつ動きを変えて次のページの絵を描く過程に似ています。

各ツールの違いが生まれる理由

動画生成AIは「高画質な絵を描く能力」に加えて、「自然な動きのパターンを記憶する能力」を兼ね備えたプログラムと言えます。この「動きの記憶」の精度や得意なパターンが、ツールごとの個性となって現れるのです。

【比較】主要な動画生成AIツール10選|同一プロンプトによる出力

今回の比較検証では、2025年7月現在、ビジネスおよびクリエイティブの現場で広く利用されている、以下の動画生成AIツールを選定しました。

・Kling
・Runway
・Pika
・PixVerse
・Luma A
I
・Hailuo AI
・Veo
・Wan
・Seedance

・Higgsfield(画像から動画生成のみ)
・Midjourney(画像から動画生成のみ)

これらのツールは、それぞれ独自の強みと個性を持っており、得意な表現領域や操作性が異なります。ここからは、3つのテーマに沿って、同じ指示(プロンプト)に対して各ツールがどのような映像を生み出すのか、その実力を詳しく見ていきましょう

なお、各ツールの詳細な料金プランや商用利用の条件については、以下の比較ガイドで網羅的に解説していますので、併せてご覧ください。
【2025年最新】動画生成AIのおすすめ7選|料金・商用利用を制作会社が徹底比較

テーマ1:風景・ドローンショット

まずは、動画生成AIの「基礎体力」とも言える、風景描写の能力を比較します。多くのCMやプロモーションビデオで多用される美しい風景ショットは、AIが何もないテキストの状態から、どれだけリアルで破綻のない世界を創造できるかという、純粋な生成能力を測るのに最適なテーマです。ここでは、テキストからの直接生成(Text-to-Video)と、一度高品質な画像を生成してから動画化するワークフロー(Image-to-Video)の2つのアプローチで、各ツールの実力を検証します。

【Text-to-Video】主要8ツールの直接生成

【共通の動画生成プロンプト】
drone footage, aerial view, photorealistic, professional cinematography, ultra-detailed, 8K, sharp focus, a beautiful coastline in Okinawa Japan, white sandy beach, lush green cliffs, clear turquoise water with gentle waves lapping the shore, some fluffy white clouds in the sky, slow motion, sound of gentle waves and a light sea breeze, peaceful ambiance, bright sunny day, natural sunlight creating sparkling reflections on the water, cinematic, epic wide shot, smooth forward tracking shot

(日本語訳:ドローン映像、空撮、フォトリアル、本格的な映画撮影、超高精細、8K、シャープなフォーカス。日本の沖縄の美しい海岸線、白い砂浜、緑豊かな崖。穏やかな波が岸に打ち寄せる、透明なターコイズブルーの海。空には、ふわふわした白い雲がいくつか浮かんでいる。スローモーション。穏やかな波の音と、かすかな潮風。平和な雰囲気。よく晴れた日、自然光が水面にキラキラと反射している。映画のような、壮大なワイドショット、滑らかな前方へのトラッキングショット。)

【Image-to-Video】MidjourneyとHiggsfieldの画像生成からの動画化比較

テキストから動画生成が対応していないMidjourneyとHiggsfieldを比較するため、「一度静止画を生成し、それを動画化する」という、2ステップのワークフローで検証します。

ステップ1:基準となる高品質な画像を生成

まず、Midjourneyで以下のプロンプトを実行し、基準となる静止画を生成します。

ステップ2:基準画像を各ツールで動画化

次に、上記の画像をMidjourneyとHiggsfieldそれぞれに入力し、Text-to-Videoと同じ共通プロンプトで動きを指示し、動画を生成します。

【出力結果の比較】

テーマ2:製品広告ビジュアル

次に、eコマースサイトやSNS広告で最も重要となる、商品の魅力を伝える映像の生成能力を比較します。AIは、すでにある製品写真(静止画)に、どれだけリッチで魅力的な「動き」の演出を加えられるのでしょうか。このテーマでは、単に動くだけでなく、製品の質感を維持し、商業クオリティにどれだけ迫れるかが問われます。ここでは、同一の入力画像とプロンプトに対し、各ツールがどのような映像表現を生み出すかを検証します。

【共通の入力画像】

【共通の動画生成プロンプト】
The smartphone on the screen, ultra-detailed product commercial video, a single drop of water falls in slow motion from above, landing on the center of the screen and creating beautiful, clean ripples that spread outwards, the background remains a clean, minimalist dark gray, soft studio lighting, elegant, sophisticated, macro shot, cinematic

(日本語訳:画面に映っているスマートフォン。超高精細な製品コマーシャルビデオ。一滴の水が上からスローモーションで落ち、画面の中央に着水し、美しくクリーンな波紋が外側に広がっていく。背景はクリーンでミニマルなダークグレーのまま。柔らかいスタジオ照明、エレガント、洗練された、マクロ撮影、映画のような。)

【出力結果の比較】

狙い通りの動画を創り出す、プロンプト作成のコツ

今回の比較で見たように、同じプロンプトでもAIによって解釈は様々です。しかし、いくつかのコツを押さえることで、AIの性能をさらに引き出し、より意図に近い動画を生成することが可能になります。

カメラワークを具体的に指示する

動画ならではの魅力は「動き」です。プロンプトに具体的なカメラワークの指示を加えることで、映像のクオリティは大幅に向上します。映画撮影で使われるような、以下の専門用語は多くのAIが理解します。また、生成前に選択できるAIツールもあるので確認しましょう。

dolly shot:カメラが被写体に近づいたり遠ざかったりする動き

pan left / pan right:カメラを固定したまま、左右に振る動き

zoom in / zoom out:ズームレンズを使って、被写体を拡大・縮小する動き

crane shot:クレーンを使って、カメラが上下に大きく動くダイナミックな動き

動きの「速さ」と「質感」をコントロールする

映像の雰囲気を決める、動きのスピード感や質感を指示することも重要です。こちらも、生成前に選択できるAIツールもあるので確認しましょう。

slow motion:スローモーション。優雅さや、インパクトを強調したい場面で有効です。

hyperlapse:ハイパーラプス(タイムラプスに動きが加わったもの)。都市の風景や雲の流れなど、長時間の変化を短時間で見せる際に効果的です。

cinematic film grain:映画のようなフィルムの質感(粒子感)を加え、アナログで温かみのある雰囲気を演出します。

Image to Video / Video to Videoを効果的に使う

テキストからだけでなく、既存の画像や動画をベースにすることで、よりコントロールされた映像制作が可能です。「この画像の構図のまま、人物だけを動かしたい」といった、具体的な指示をAIに与えることができます。

動画生成AIの安全な利用のために(著作権と注意点)

動画生成AIは強力なツールですが、ビジネスで利用する際には著作権や肖像権など、いくつかの法的な注意点が存在します。安全に活用するためには、各ツールの利用規約を遵守することが不可欠です。

動画生成AIの商用利用に関しては、以下のまとめ記事で詳しく解説しています。
【2025年最新】動画生成AIのおすすめ7選|料金・商用利用を制作会社が徹底比較

動画生成AIの活用に関するFAQ

最後に、動画生成AIの活用について、一般的に多くの方が抱く疑問とその回答をまとめました。

Q. 映画のような長い動画も作れますか?

A. 2025年7月現在、ほとんどのAIツールで一度に生成できるのは数秒から、長くても1〜2分程度の短い動画クリップです。映画のような長時間の映像を作るには、これらの短いクリップを複数生成し、動画編集ソフトで繋ぎ合わせる作業が必要になります。

Q. 生成した動画の人物や背景が、途中で崩れたりしませんか?

A. AIの性能は向上していますが、特に長い動画や複雑な動きでは、人物の顔や背景の物体が一貫性を失い、歪んだり(ちらつき現象)、別のものに変化したりする現象がまだ起こることがあります。高品質なツールほどこの現象は少なくなりますが、完璧ではないことを理解しておく必要があります。

Q. AIが生成した動画の音はどうなりますか?

A. 多くの動画生成AIは、現時点では映像のみを生成し、音声(BGM、効果音、セリフなど)は生成しません。プロンプトに音に関する記述を入れることで、その雰囲気に合った映像が生成されやすくはなりますが、実際の音声は別途、動画編集ソフトで追加する必要があります。ただし、一部の最新ツールでは、簡単な効果音などを同時に生成する機能も登場し始めています。

まとめ:ツールの「個性」を理解し、映像表現に応じて使い分ける

本記事では、主要な動画生成AIを、異なるテーマで比較検証しました。

結論として、AIにはそれぞれ得意な映像表現(リアルな風景、アーティスティックな演出、人物の繊細な表情など)や独自の「個性」があります。

この比較ガイドを参考に、ぜひご自身のプロジェクトの目的に応じて最適なツールを使い分け、質の高いクリエイティブ制作にお役立てください。AIの進化は続きますが、その「個性」を深く理解し、使いこなすことが、これからのクリエイターやマーケターにとってますます重要なスキルとなるでしょう。

本記事は2025年7月時点の情報に基づいて作成されています。生成AI技術は日々進化していますので、最新の情報は各サービスの公式サイトでご確認ください。

※生成AIで出力したコンテンツを商用利用する場合は、利用規約の解釈や著作権リスクの評価について、社内の法務担当者や専門家にご相談することを強く推奨します。特に大規模な商用展開や重要なビジネス用途での利用前には、必ず専門的な法的助言を求めることが重要です。

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