「MidjourneyとAdobe Firefly、同じ指示でも作風はどう違うんだろう?」 「広告で使う画像のバリエーションを、もっと効率的に探れないだろうか?」
画像生成AIをビジネスで活用しようとするとき、私たちが直面するのは、こうした実践的でクリエイティブな課題です。ツールの基本的な性能だけでなく、「どう使い分ければ、もっと良いものが作れるのか」という知見が、成果を大きく左右します。
この記事は、AIを使ったプロモーション制作を専門とする私たちブルーアールが主要な画像生成AIの「作風」と「指示への反応」を、同じプロンプトで徹底的に比較する、クリエイターとマーケターのための実践ガイドです。各ツールの個性と実力を深く理解し、貴社のクリエイティブ制作を一段階上へと引き上げるための一助となれば幸いです。
なお、各ツールの料金や商用利用の規約に関する詳しい比較は、以下のまとめ記事で詳しく解説しています。
→【2025年最新】画像生成AIのおすすめ6選|料金・商用利用を制作会社が徹底比較
もし、この記事を読み進める中で「AIを自社の宣伝・広告課題の解決に活用したい」「社内向けにAI活用の勉強会を開催したい」と感じられたなら、私たちがお力になれるかもしれません。まずはお気軽に、記事の末尾かお問い合わせからご相談ください。
比較の前に:画像生成AIの基本的な仕組み

私たちの「実験」の結果をより深く理解いただくために、まず画像生成AIがどのような仕組みでビジュアルを生み出しているのか、その基本を簡単にご紹介します。現在主流となっているのは、「拡散モデル」と「Transformer型モデル」という2つの技術、そしてそれらを組み合わせたアプローチです。
拡散モデル(Diffusion Models)
拡散モデルは、ランダムなノイズ(砂嵐のような画像)から、少しずつノイズを取り除いていくことで、最終的に意味のある画像を再構成する手法です。数百回にわたる細かいノイズ除去作業を経て、非常に高画質で細部まで表現された画像を生成できるのが特長で、MidjourneyやAdobe Fireflyなど、多くの高画質系モデルがこの仕組みを採用しています。
Transformer型モデル
Transformer型モデルは、もともとChatGPTなどの言語AIで使われていた、テキストの意味を正確に理解することに優れたAI構造を画像生成に応用したものです。テキストと画像を同時に処理できるため、複雑な指示や会話の流れに沿った画像の生成・修正を得意とします。ChatGPTに搭載されている画像生成機能は、このモデルの代表例です。
最新トレンド:2つの技術の融合
2025年現在の最先端トレンドは、テキストの意図を正確に理解するTransformerと、高品質な画像を生成するDiffusionモデルの長所を組み合わせたハイブリッドな構造です。その代表例として、Stable Diffusion 3で採用されているMMDiT(Multimodal Diffusion Transformer)のような、両者の強みを統合した新しいアーキテクチャ(設計構造)が次々と登場し、技術革新を牽引しています。
【比較】主要な画像生成AIツール6選|同一プロンプトによる出力

今回の比較検証では、2025年7月現在、ビジネスおよびクリエイティブの現場で広く利用されている、以下の主要な6つの画像生成AIツールを選定しました。
・Midjourney
・Adobe Firefly
・Ideogram
・ChatGPT
・Krea
・Whisk
これらのツールは、それぞれ独自の強みと個性を持っており、得意な表現領域や操作性が異なります。次のセクションから、同じ指示(プロンプト)に対して、各ツールがどのように応え、どのようなビジュアルを生み出すのか、その実力を詳しく見ていきましょう。
なお、各ツールの詳細な料金プランや商用利用の条件については、以下の比較ガイドで網羅的に解説していますので、併せてご覧ください。
→【2025年最新】画像生成AIのおすすめ6選|料金・商用利用を制作会社が徹底比較
テーマ1:人物(フォトリアルな日本人女性)
企業のウェブサイトや広告で最も需要の高い、人物写真の生成能力を比較します。
【共通プロンプト】
A photorealistic portrait of a 30-year-old Japanese woman, smiling gently, short bob hair, wearing a white shirt, soft window light from the side, plain light gray background, high-detail, 8K, cinematic photo.
(日本語訳:30歳の日本人女性のフォトリアルなポートレート。穏やかに微笑み、短いボブヘア、白いシャツを着用。横からの柔らかい窓の光、無地の薄いグレーの背景。高精細、8K、映画のような写真。)
【出力結果の比較】






【分析コメント】
同一プロンプトの結果比較により、各ツールの明確な「個性」が浮き彫りになりました。
Midjourney: 映画的な光表現と自然な肌質で最高画質を実現、ブランディング用途に最適。
Adobe Firefly: 安全性と企業適合性に優れ、コンプライアンス重視の企業利用に最適。
Ideogram: 独自の色調解釈を持ち、テキスト挿入機能との組み合わせで真価を発揮。
ChatGPT: バランスの取れた汎用性で幅広いビジネス用途に対応。
Krea: 明るく親しみやすい表情でSNSコンテンツに最適。
Whisk: 上品で洗練された仕上がりでエグゼクティブ向けコンテンツに適している。
プロンプト改善のポイント:
より良い結果を得るには、具体的な照明指定(「soft window light」「studio lighting」)、詳細な表情描写(「gentle smile」「confident expression」)、画質指定(「high-detail」「photorealistic」)を明確に記述することが重要です。
テーマ2:製品広告ビジュアル(化粧品のボトルと背景)
eコマースサイトや広告で利用する、商品のイメージカット(物撮り)の生成能力を比較します。
【共通プロンプト】
A luxury cosmetic bottle (perfume) on a marble surface, with a single wet rose petal next to it, studio lighting with soft shadows, elegant and sophisticated mood, product photography, ultra-detailed.
【出力結果の比較】






【分析コメント】
製品撮影における各ツールの実力比較により、商品写真制作での明確な適性差が浮き彫りになりました。
Midjourney: 圧倒的な質感表現力でガラスの透明感と光の反射を美しく再現、高級ブランドの商品撮影に最適。
Adobe Firefly: クリーンで安全な商品写真を安定生成、企業のeコマースサイトでの活用に適している。
Ideogram: 独特な色調とスタイルで個性的な仕上がり、アーティスティックな商品展開に有効。
ChatGPT: バランスの取れた商品写真で幅広い用途に対応、一般的な商品カタログに最適。
Krea: 明るく親しみやすい印象で若年層向け商品やSNSマーケティングに適している。
Whisk: 上品で洗練された質感表現、プレミアム商品のブランディングに効果的。
プロンプト改善のポイント: より良い結果を得るには、具体的な質感指定(「glass reflection」「water droplets」)、詳細な照明描写(「soft studio lighting」「professional photography」)、ブランドイメージ(「luxury」「premium」)を明確に記述することが重要です。また、商品の材質や色調を具体的に指定することで、より期待に近い商品写真の生成が可能になります。
テーマ3:アニメ風イラスト(日本の夏の田園風景)
ゲームやSNSコンテンツなどで需要が高い、特定の画風を再現する能力を比較します。
【共通プロンプト】
An anime-style illustration of a lone high school girl with a ponytail, wearing a summer uniform, standing at a rustic bus stop in the Japanese countryside, a vast blue sky with towering summer clouds. Nostalgic and cinematic atmosphere, with dramatic light with sunbeams piercing through the clouds, vibrant colors, highly detailed photorealistic background.
(日本語訳:日本の田舎にある古びたバス停で、夏服を着てポニーテールの女子高生が一人佇んでいるアニメ風イラスト。広大な青空に入道雲、背景には青々とした水田が広がる。ノスタルジックで映画のような雰囲気、雲間から光が差し込むドラマチックな光と鮮やかな色彩、非常に高精細で写実的な背景。)
【出力結果の比較】






【分析コメント】
アニメ風イラストにおける各ツールの表現力比較により、日本のアニメーション文化への理解度と再現能力の明確な差が浮き彫りになりました。
Midjourney: 圧倒的な背景描写力と映画的美しさを実現、高品質なビジュアル制作に適している
Adobe Firefly: 安定したアニメ調表現で企業向けコンテンツに活用可能。
Ideogram: 独特な光の表現と幻想的な雰囲気でアーティスティックな作品に有効。
ChatGPT: バランスの取れたアニメ表現で汎用的な用途に対応。
Krea: 明るく親しみやすいアニメ調でSNSコンテンツに最適。
Whisk: 繊細な線画と上品な色調で質の高いイラスト制作に適している。
プロンプト改善のポイント:
より良い結果を得るには、一般的な画風の特徴(「cel-shaded animation」「traditional anime art」)、詳細な時間帯指定(「golden hour」「summer afternoon」)、感情表現(「nostalgic」「melancholic」)を明確に記述することが重要です。また、キャラクターの詳細な服装や表情、背景の具体的な要素を指定することで、より期待に近いアニメ風イラストの生成が可能になります。
狙い通りの画像を創り出す、プロンプト作成のコツ

優れたAIモデルを使っても、指示(プロンプト)の質が低ければ、意図しない画像が生成されてしまいます。ここでは、普遍的な基本構造から、2025年現在の最新トレンドまで、プロンプト作成の要点を整理します。
成功の鍵:プロンプトの構造的な考え方
AIは人間のように「行間」を読むのが苦手です。そのため、曖昧な言葉(例:「きれいな風景」)ではなく、具体的で明確な要素を積み重ねていくことが成功の鍵となります。まずは、以下の基本構造を意識してみてください。
おすすめの要素と順番
プロンプトは「主要な被写体」から書き始め、「背景」「光」「スタイル」といった周辺情報へと広げていくと、AIが構図を理解しやすくなります。
1. 主要被写体 (Subject):最も描いてほしい中心的なモノや人物。
(例:A Japanese woman
)
2. 詳細 (Details):被写体の服装、表情、髪型、動作など。
(例:wearing a kimono, smiling
)
3. 背景・環境 (Setting):被写体がいる場所や周囲の状況。
(例:in a traditional Japanese garden with cherry blossoms
)
4. 光・時間帯 (Lighting/Time):雰囲気やリアリティを決定づける光の描写。
(例:soft morning light
)
5. スタイル (Style):全体の作風。写真、イラスト、絵画など。
(例:photorealistic, cinematic photo
)
6. 技術仕様 (Technical Specs):解像度やアスペクト比など。
(例:high resolution, --ar 16:9
)
最新トレンド:プロンプト技術の進化
基本構造を理解した上で、現在の主流となっている、より高度なテクニックをご紹介します。
トレンド1:より自然な「会話型プロンプト」へ
最新のAIモデルは非常に高い言語理解能力を持つため、必ずしも単語を羅列する必要はありません。「夕暮れの京都の街を、着物を着た女性が歩いている、映画のワンシーンのような写真」といった、より自然な文章で指示する方が、AIが全体の文脈を理解し、創造性豊かな結果を出すことがあります。
トレンド2:「見て真似る」画像プロンプトの活用
多くのツールで、参考画像をプロンプトの一部として使用できます。これは「スタイル参照」や「イメージプロンプト」と呼ばれる機能で、テキストだけでは伝えきれない複雑な画風や雰囲気を、AIに直接「見て真似させる」ことができます。ブランディングで画像のトンマナ(デザインの統一感)を統一したい場合などに極めて有効なテクニックです。
表現の精度を高める補助テクニック
上記のトレンドと合わせて、以下の補助的なテクニックも依然として有効です。
・ネガティブプロンプトの活用:多くのツールでは、「描いてほしくない要素」(例:--no blurry background, deformed hands
)を指定することで、意図しない結果を排除し、完成度を高めることができます。
・言語の選択:日本語の精度は飛躍的に向上していますが、AIの学習データの中心は依然として英語です。そのため、より繊細なニュアンスや専門的な表現を求める場合は、DeepLなどの翻訳ツールを活用して英語でプロンプトを作成するのも有効な手段です。
画像生成AIの活用に関するFAQ

最後に、画像生成AIの活用について、一般的に多くの方が抱く疑問とその回答をまとめました。
Q. 画像生成AIを使うのに、専門的なスキルや知識は必要ですか?
A. 基本的な画像を生成するだけであれば、特別なスキルは必ずしも必要ありません。多くのツールは直感的な操作が可能で、簡単なテキスト指示(プロンプト)で誰でも画像を生成できます。しかし、企業のブランドイメージに合致させたり、広告クリエイティブとして特定のメッセージを込めたりと、ビジネス目的で「狙い通りの高品質な画像」を安定して生成するには、プロンプト技術やデザイン原則の理解、各ツールの特性を知り尽くした経験が求められます。
Q. 自社のブランドイメージに合った画像を生成できますか?
A. 多くのツールには、参照画像の色や作風を反映させる機能(スタイル参照)や、同じキャラクターを維持して生成する機能などがあります。これらの機能を活用することで、企業のブランドガイドラインに沿ったトンマナ(デザインの統一感)の画像を生成することができます。ただし、現状ではAIの特性上、毎回完全に同じ品質やスタイルを再現するには、細かな指示の調整や試行錯誤が必要となる場合があります。
Q. 結局、どのツールを使えば良いのでしょうか?
A. 本記事で解説した通り、目的に応じて最適なツールは異なります。「品質と芸術性ならMidjourney」「安全性ならAdobe Firefly」「文字を入れるならIdeogram」といったように、それぞれの強みを理解し、プロジェクトの要件に合わせて使い分けることが重要です。
まとめ:ツールの「個性」を理解し、目的に応じて使い分ける
本記事では、主要な画像生成AIの比較から、実践的なプロンプトのコツまでを解説しました。
結論として、全ての要求を完璧に満たす万能なツールは存在せず、各AIにはそれぞれ得意な作風や独自の「個性」があります。この比較ガイドを参考に、ぜひご自身のプロジェクトの目的に応じて最適なツールを使い分け、質の高いクリエイティブ制作にお役立てください。
AIの進化は続きますが、その「個性」を深く理解し、使いこなすことが、これからのクリエイターやマーケターにとってますます重要なスキルとなるでしょう。
本記事は2025年7月時点の情報に基づいて作成されています。生成AI技術は日々進化していますので、最新の情報は各サービスの公式サイトでご確認ください。
※生成AIで出力したコンテンツを商用利用する場合は、利用規約の解釈や著作権リスクの評価について、社内の法務担当者や専門家にご相談することを強く推奨します。特に大規模な商用展開や重要なビジネス用途での利用前には、必ず専門的な法的助言を求めることが重要です。
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